空自F-35墜落事故の考察
2019.06.16
令和元年6月10日付けで防衛省が発表したF-35墜落事故のお知らせを読んで事故原因について考察してみた

墜落機の状況
・夜間模擬空中戦訓練を終えた1分後高度31,000ft方位180で水平飛行
・管制から高度37,00ft方位220で接近する米軍機を回避するため降下を指示される
・緩やかに左旋回しながら約20秒間で16,000ft降下(降下速度900km/h)
・高度15,500ftで管制から左旋回の指示を受け方位110から数秒で方位360まで急旋回する
・急旋回中に降下速度が900km/hから1,100km/hに増す
・旋回を終えパイロットは落ち着いた声で管制に「訓練中止」と告げ降下を続ける
・15秒後降下速度1,100km/hのまま海面近くでレーダーから消える
・機体異常を伝える交信も脱出を試みた形跡も無し
・管制の指示に従って回避行動を開始してから墜落まで約35間の出来事だった

状況からの推理
・最初の20秒は旋回で下向きのGを感じていたためパイロットは急激な降下率を意識出来なかった
・二度目に管制から左旋回の指示を受けて急旋回し空間識失調に陥った
・最後の15秒は旋回から直進になってふわっと浮いた感じになり急激な降下率を感じとれなかった
・HUDにLEDで投影される表示が明るすぎて邪魔で消していた
・接近する米軍機を視認しようとして計器への注意が少なくなり高度の異常減少に気付かなかった
・自分は北の方角へ水平飛行しているつもりで右上方を通るであろう米軍機を探そうと見張に集中した
・パワーを絞った形跡が無い事から自分はまだ十分な高度にいると誤認していた可能性が有る

知りたい情報
・直前の水平飛行時のエアスピードは時速900Kmくらいだったのか?
・共に訓練していた他の3機の飛行状況と証言
・墜落機が回避しようとした米軍機の航跡
・戦闘機ではドッグファイト以外でも時速1,000Km前後の降下率での急降下は良く有る事なのか?

結語
 原因は二つ考えられる。一つは発表の通り空間識の異常、もう一つは夜間のHUDによる眩惑。そしてその二つが重なった事で事故になったのではないか。空間識について最初に管制から降下の指示をうけて降下したまでは良かったが、次に旋回の指示を受けた際にそのまま急旋回をしてしまった為に空間識失調を起こしたのではないか。急旋回する前に一旦レベルオフ(水平飛行に戻す)してから旋回すればもしかしたら事故は避けられたかも知れない。あるいは管制が降下指示の際"decending to 20,000ft"とか高度を指定していたらパイロットの注意が高度計に向き途中で異常に気付けたかもしれない。HUDについては現物を使ってみた事が無いので分からないが、写真や映像を見る限り慣れるまで大変だろうなと想像がつく。そもそも最初の降下でパワーを絞っていない様だが戦闘機ではそれが普通なのだろうか?米軍機とのセパレーションも十分なので想定外の回避行動で慌てたとも思えない。操縦していた細見三等空佐はF-4のパイロットを勤めたベテランだったとの事。フライバイワイヤを備えたF-2を経験せずにクラシックなアナログF-4から最新デジタル満載F-35へ機種転換したのだとしたら、逆に昔の経験が邪魔をした可能性も有るかもしれない。それにしてもF-35のコックピットやヘルメットのHUDの様子を見るにつけ、もう戦闘機はAIで無人化するとかドローンの様に遠隔操作にした方がいいんじゃないかという気がする。

細見三等空佐のご冥福をお祈りします。

■防衛省が発表した文書の図






■F-35専用ヘルメットのバイザーに写されるHUDの画像
夜間は表示が明るすぎて邪魔だと言われメーカーのRockwell Collinsが改善すると発表したとか・・




■Rockwell Collins ESA Vision SystemsのF-35専用ヘルメットの宣伝映像



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