社会の縮図
2016.12.04
 知人が仕事を探すことになり就農フェアという農業を始めようとする人を対象にしたマッチングイベントに行ったら、年齢が高すぎて相手にしてくれなかったとぼやいていた。話しを聞いたらそのイベントでは脱サラした人に農業を始めるアドバイスをして、農作業に必要なトラクターなどの農機具等凡そ二千万円相当を買う契約をさせてローンを組ませるという仕組みだった。彼は50歳代でもう長いローンが組めないので相手にして貰えなかったのだった。誰かに借金をさせて長期間定期的に金利を支払わせる。そのビジネスモデルは数百年前から実生活の様々な場面で目にする。

 住宅や車のローンなど個人レベルから会社の運転資金など法人レベル、もっと大きく国家レベルでも同じ様な事が行われている。世界には国家に借金を負わせてその金利で稼いでいる資本家がいて、18世紀頃先進国は資本家から借金をして国を運営するようになっていた。明治維新以後日本もその仕組みに組み込まれ、国際的な巨大資本から借金をして武器や軍艦を買い何十年もかけて真面目に返済をしていた。1904年(明治37年)に勃発した日露戦争で日本政府は戦費の半分以上にあたる金額を外国債券で調達した。その償還が完了したのは1986年(昭和61年)と言われてる。

 列強のアドバイスで新しい軍隊を作り武器や軍艦を買い借金をした明治政府も、就農フェアでトラクターを買ってローンを組む脱サラした人も、規模が違うだけではまっているビジネスモデルは同じだ。しかし、もし脱サラしたサラリーマンが自分で農地を確保して自分でトラクターを生産しだして一緒に農業をする仲間を増やし出したらどうなるか?恐らく既存のトラクターメーカーやトラクターを買う人にローンを組ませている銀行は潰しにかかるだろう。市場でフェアに競争するのであれば良いが、脱サラの仲間達がトラクターを作れなくする為に部品や材料の流通を止めたり、銀行が資金を調達出来なくしたりするかも知れない。今から凡そ80年前、国家レベルでそれと同じ事が行われた。

 明治維新以降日本は日清戦争、日露戦争、第一次大戦を戦いシベリア出兵にも参加した。それらの戦争を戦う為に武器や軍艦を買い莫大な借金をして国際資本にせっせと金利を支払っていた。しかし、戦争に勝つ度に領土を広げ軍事力も増大し次第に列強にとって脅威となった。で、満州を手に入れた辺りで列強だけでなく国際資本にとっても脅威となってしまった。日本が発展を続け資本を蓄積してゆけばいつかは将来自分たちの領域を侵されてしまう。そこで軍縮会議で軍艦を減らせとか、満州国を認めないとか、日本が成長をやめて国際資本の元で借金を返す地位に戻させようとした。しかし日本はそれに従わず国際連盟を脱退した。すると彼らは支那事変を起こして日本を疲弊させ、鉄屑などの資源を禁輸、外国にある日本の資産を凍結、日本への石油の禁輸など、今の北朝鮮に対する制裁よりも厳しいのではと思うくらいの制裁が実施された。もうその頃日本にはご免なさいと謝って状況を元に戻して貰える相手がいなくなっていた。兵糧攻めで国が飢えてゆくのを打開すべく日本は大東亜戦争に打って出るしか無かった。

 就農フェアでトラクターを買うだけにしておけば良かったのに、自分で作り出してしまい土地も手に入れてしまい、銀行の忠告も聞かずに銀行の商売まで脅かす様な事業を始めてしまった。で、業界と銀行に妨害されて潰されてしまった。しかも暴力団がやって来て家に火をつけられ仲間も大勢殺されてしまった。例えればこれが1900年頃から1945年までの約半世紀の間に日本に起きた事である。12月8日は大日本帝国が米英に宣戦布告して大東亜戦争を開始した日。なぜ日本は戦争をしたのか、他にも色々と考えてみたいと思います。

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